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 2015年度ワークショップ&講演会

講師:平田オリザさん(劇作家・演出家)
  「わかりあえないことから-コミュニケーション能力とは何か」
 2015年9月23日(祝)福岡市中央市民センターホールにて開催

 私たちの会では、子育て中のお母さんや子どもの声をずっと集めてきました。学習指導要領の改訂で授業時間が長くなり、子どもたちは小学1年生から学校で長い時間過ごし、学力テストのためのテストが何度も繰り返され、宿題も多く、席に座れない子や学習についていけない子は特別支援教育を受けるようになりました。先生方も長時間勤務で疲れている。

 そんな時出会ったのが、平田オリザさんの「わかりあえないことからコミュニケーション能力とは何か」という本。これからの教育、未来への希望のヒントがあるのでは?と、2015年

本の主旨に沿った内容の公開ワークショップと講演会を企画しました。ワークショップ90分、講演会90分と休憩を入れて3時間半の催しでした。

公開ワークショップと講演会の内容を収録した

2枚組DVD販売中です

​(運営費のカンパになります)

会員¥1,000

一般¥1,500

申込み/TEL・FAX 092-406-4125

【公開ワークショップより】

  • 声を出して仲間を集める

  • ウォーミングアップできっかけづくり

  • 体を使った身体系のワークショップ 

  • イメージを共有して一定時間内に結果を出す

  • 中身がよければ伝わるのか?

【講演会より】

これからは、知識や情報を一方的に詰め込むような教育から、もっと楽しい授業、もっと面白い授業が必要。私たちは基本的なところに立ち返っていかなきゃならない。そのために、このような教育ワークショップが重要になってくる。それは一部のエリートだけでなく、どの子にも小学校から少しずつやっていくことが大切。そんなに難しいことではない。教員や保護者の皆さんが意識改革できれば。

・国語の授業、表現が出てくるのを待つ勇気

今やって面白い、全員が参加できる、でも学芸会のような一人一セリフみたいな悪平等ではない。教室で少ないコマ数でできる。

音響など一切いらない。そういう演劇を使った授業教材(三省堂国語の教科書小6・中2)を、先生方と開発。

・広がる文化資本の格差

インターネットの時代、大学で必要とする知識や情報、何を学ぶかは世界中どこでも選べるようになる。エリート大学は自信があるから授業内容をほとんどインターネットで公開している。議論したり、一緒に学んで知識を高めていくことが実は大事。

日本は、140年かけて教育の地域間格差のない素晴らしい国を作ってきたけれども、ここではもう一度文化格差が広がる可能性がある。小さな自治体ではもう、コミュニケーション教育全校実施、小中学校全部で演劇の授業をやりますよ、というところもたくさん出てきている。最終的な判断をする首長のセンスによって、地域間格差が出る時代になってきている。

・関心をもって主体的に学ぶ力を

授業を面白くしよう。関心を持ってもらって、主体的に学ぶ力を少しでも付けていこうと、文部科学省のコミュニケーション教育推進会議で議論されている。子どもたちの自尊感情とか学びのモチベーションをあげられるのではないか、ここに一番注目している。

・フィンランドメゾット

グローバルコミュニケーションスキルとは、英語が話せる、リベートができるとかではなくて、異文化、異なる価値観を持った人に思いを馳せる能力、想像力。こういう異文化理解能力を中心に授業を進めてきたのがフィンランド。

人はそれぞれ、感じ方が宗教とか文化が違えば全然違うから、これを一つの道徳的規範に国語教育でまとめるのは無理だし、またそれはやってはいけない。でもそこでとどまるのではなく、そのバラバラの人間が一つの社会を構成していかなくてはいけないので、アウトプットは一定時間内できちんと出しなさい。というのがフィンランドメゾット。国語教育とは大きく違っていることがわかる。

・日本の国語教育の歴史とこれから

従来的な国語教育の基本的な概念というのは、近代国家の成立と並行してあった。それは当然言語規範、感じ方・イメージの共有を統一する方向へと動く。でも成熟した社会では、もうその必要がない。だから従来型の国語教育は使命が終わっている。これからはそういう多様性、一人ひとりのイメージの違いをきちんと認めながら、どうやって共有していくか、そういう能力の方に重点が置かれる。

われわれが持っていた幻想、「個性重視」。でもそれはもう、ただの「違い」でしかない。みんな違うけど、それが一つの社会を構成しないといけないから、まとめる能力が必要。これが本当の意味での合意形成能力。異文化理解能力。他者を理解する能力が問われる試験に変わっていく。

・演劇教育で疑似体験を

「伝えたい」という気持ちは、「伝わらない」という体験からしか来ない。一番いいのは体験教育だが、演劇の手法により、疑似体験をさせることができる。子どものコミュニケーション能力はむしろ上がっているくらい。でもグローバル化によって社会が要求するコミュニケーション能力はもっと格段に上がってきている。

・人間は演じる、演じ分ける生き物

人はいろんな仮面をかぶって生きている。仮面自体の総体が人格を形成している。ただそれが演じさせられている、他者から強制させられていると思うと、この仮面が重くなってしまう。いい子を演じるのに疲れたという子どもにもう演じなくてもいいよ、本当の自分を見つけなさいというのは、実は大人の欺瞞に過ぎない。少なくとも教育の目的は、いい子を演じるのに疲れない子どもを作ること。

【感想より】

◆様々な経験をしてみたい、その思いから、司会進行という大事な役目もすることになり、嬉しかったし不安でもありました。

オリザさんの話を聞いて、思うこと共感できた所はたくさん。でも、それを言葉でなんて表していいのかが難しいです。司会進行も初めてのことだらけで、すごく緊張したし、頭の中は次のアナウンスのことでいっぱいでしたが、終わってみると達成感があったし、やってよかったなと思えました。今回のことを、これからの人生で知識や経験としていかしていけたらいいです。(高校生)

◆一人っ子の親として子どものコミュニケーション能力や世代間(祖父母)のしつけの違い、友人関係について何を問題として、親として知っておくことか、方向が見えました。保育士として0歳からコミュニケーション言語をどう育てるかも、イメージだけでなく論理的に知ることができました。

◆コミュニケーション能力は低下していない、社会状況が変化し社会が望むコミュニケーション力が上がっている。そして子育てする環境はコミュニケーションがいらない方向へすすんでいる。そのギャップが大きい。との話がなるほど印象深かったです。

仮面の総体が人格を形成するとの話、仕事と家庭でみせる自分の姿のちがいはいいのだ、あたり前なのか、とホッとさせられた。とてもいいお話でした。

◆ワークショップに参加しておもしろかったです。参加者同志の雰囲気が最初は緊張していてぎこちない感じでしたが、だんだん親しく感じました。講演会では、大学入試改革についての話が、高校生の子どもがいるので参考になりました。これからは、自分の頭で考えられる能力が大切なのかなと思いました。また、コミュニケーション能力は、単純に言えない複雑なことから(世代間、男女間)成り立っているんだと思いました。

◆福岡の教育は教育文化の規制が強く、時間的な拘束も強く、教師がなかなか自由になれない状況があると危惧しています。今日の内容を教育委員会の人間に聞かせたいと強く思いました。ワークショップは虚実の何かを意識させて頂き、たいへん示唆的でした!

◆教員として劇を何とか現場に取り入れたいと模索している中、たくさんのヒントをいただきました。ただ、福岡市の現場がなかなかそれを受け入れない現実があります。「教科」のわくにこだわり、変わることを恐れているように感じます。

 今回の企画にあたり、舞台に上がってもらうワークショップの参加者は、演劇部がある高校を廻って募りました。他にも、小学校の先生や子育てNPOの方、中・高校・大学生などたくさんの方々が参加してくださいました。

■7/20(祝)プレ企画 カフェ&トーク①の様子はこちら⇒(詳細

 

■ 9/6(日)プレ企画 カフェ&トーク②の様子はこちら⇒(詳細

 

■10/4(日)アフター企画 カフェ&トーク③

平田オリザ

 劇作家・演出家・青年団主宰。こまばアゴラ劇場支配人。

 1962年東京生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。

 1995年『東京ノート』で第39回岸田國士戯曲賞受賞。

 

 東京藝術大学・アートイノベーションセンター特任教授

 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター客員教授

 

 市民社会に開かれた新しい演劇教育の道を開拓し、2002年度以降中学校の国語教科書で、2011年以降は小学校の国語教科書にも平田のワークショップの方法論に基づいた教材が採用され、多くの子どもたちが教室で演劇を創作する体験を行っています。

 他にも障害者とのワークショップや、自治体やNPOなどと連携した総合的な演劇教育プログラムの開9発など、他に例を見ない多角的な演劇教育活動を展開しています。

 

  学びの場.com インタビュー記事

 平田オリザ コミュニケーション教育を語る。

 

 ワールド・カフェ.net ワークショップレポート

 わかりあえないことから始まるコミュニケーション

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